さて、日本代表の大活躍もあって大いに盛り上がったW杯南アフリカ大会も残すところ3位決定戦と決勝戦だけになってしまいました。毎回のように、準々決勝や準決勝の多様性のある熱い戦いを消化してしまうと、ああもう少しでW杯が終わってしまうといった寂寥感に苛まれます。ただし、あと少しでこの素晴らしい大会のエンディングが見られる訳ですから、気持ちを入れ直してしっかりと見届けたいと想います。
想えば今大会は僕の食指を動かす多くの好チームが出場するという事で、かなり気合を入れて各チームの事前ゲームなどを観てきました。32チームという沢山のチームが参加する大会ではありますが、4チームごとの8グループに分かれた方式であり、その後のトーナメントも各グループの1位と2位の振り分けが事前に決まっている方式でしたので、かなり筋道の立て易い大会ではありました。僕自身も事前ゲームから得る情報量が多ければ多いほど予想段階での楽しみが増えると考えていましたので、素敵な時を過ごさせていただきました。
僕が立てた各グループリーグの事前予想では、16チームのうち12チームが決勝トーナメントに勝ち残ってくれました。ただし、僕自身はこれはそれ程高い精度だとは想っておりません。むしろ僕が重要視していた通過順位も含めた事前予想において、16チームのうち10チームを的中する事ができた事が喜びであり、楽しみながらも報われた気がします。サッカーへの同じ情熱を持ちながらも少し昔では情報招集においてここまで楽しめませんでしたから、これもインターネット時代の恩恵だと感謝しています。(各GLの事前予想と結果についてはこちらのリンク記事からどうぞ→
【2010W杯 ここまでの全試合の短評をまとめてみた】)
そしてこのW杯が始まる前に、僕は決勝トーナメントの展望予想(
【2010W杯決勝トーナメント展望&優勝チーム予想と結果について】)も立てておりました。
内容的には、ブラジルの優勝が60%、スペインの優勝が40%というもので、スペインは必ず決勝戦までは勝ち上がってくるがスペインが優勝する場合はブラジルが準々決勝でオランダに敗れた場合のみであり、その場合の決勝戦のカードはオランダがイングランドと準決勝でぶつからない限りはオランダ対スペインになるという予想でした。
奇しくもその大枠のシナリオ通りになってきましたので、ここで決勝戦のオランダ対スペインについてそれぞれの今までの歩みを掘り下げてみます。
まずはスペインですが、間違いなくこの大会を通じて強くなっていったチームの1つだと想います。つまり、強くなっていったからこそ決勝までこれたチームであり、その変化が生まれていなければ準決勝のドイツ戦、あるいは準々決勝のパラグアイ戦で破れ去っていたチームであったと想います。
具体的に何が変化したのかと言うと、僕はチームバランスであったと想います。名将デル・ボスケにとってアラゴネスの輝かしいばかりの勇退は大きな重圧であったと想います。この素晴らしいチームを率いて初のW杯戴冠を狙える光栄とともに、万人にとってそれが可能と想える状況下で指揮を獲り続けなければならないストレスに苛まれてきた日々であったと想います。
既に完成された世界最高のタレントたちで、ある程度完成された選択肢の少ないチーム設計の振り幅の中で、デル・ボスケの独自の色を出していく事はかなり困難な作業であったと想います。そして、既にユーロ王者に輝いたチームにとっての目標はW杯戴冠以外には無かったでしょうから、彼にとってはそれを成し得るためのチームのベストバランスを探る日々だったと想います。
ちょうど1年前のコンフェデ杯にて、ボスケは前線のサイドとボランチや最終ラインの組み合わせの活発なテストをおこないました。イニエスタが不在でしたので丁度良い個の実力と組み合わせの妙を図る機会となりましたが、ボスケはここでも一貫してトーレスとビジャを同時起用し続けました。テストに割いた大会となりましたので、結果は3位と振るいませんでしたが、あくまでボスケの目標はW杯での優勝であり、そのためのチームバランスの核となる部分がトーレスとビジャの併用であった事は間違いありません。
ただし、この時点でイニエスタを欠いていたとはいえ、やはり最終ラインからボランチのシャビ・アロンソを経由して前線に渡っていくビルドアップの選択肢の少なさや、その後の前線での崩しの選択肢の少なさといった攻撃における手詰まり感は漂っておりました。その原因は簡単で、トーレスとビジャを併用する事によってビルドアップから崩しに移行する局面においてのゲームを揺さぶっていく人数が不足していたのだと想います。
ここからのボスケはずっと悩み続けていたと想いますが、今年3月のまだトーレスがケガをする前のテストマッチにおいて、前半はビジャの1トップ、後半はトーレスの1トップを探っていました。そして、直前の幾つかのテストマッチではやはりビジャと復帰してきたトーレスを別々で起用するカタチになっていました。それ以外にもシャビ・アロンソとブスケツのWボランチがこの辺りで完全に固まり、1トップの廻りの3人はイニエスタとシルバがレギュラーで、シャビはセスクとトップ下を争う立場に立たされていました。
ここでボスケのシャビに対する考え方が判るのですが、以前のアラゴネス時代に見られたセナの1アンカーの位置にシャビが降りてきて低い位置からゲームを組み立てていくような多様性よりも、しっかりと守備に備える強固なWボランチの構成の方が優先であり、その考え方の下ではシャビはトップ下のレギュラー候補の1人であり、力関係によってはセスクとの逆転があり得るという感じでした。これはボスケがW杯という過酷なトーナメントに勝ち残るチーム作りを最優先に考えていたからだと想います。
ただし、W杯GL初戦のスイス戦でボスケの全ての備えは打ち砕かれる事になります。ビジャの1トップ、イニエスタとシルバの両サイド、トップ下のシャビ、シャビ・アロンソとブスケツのWボランチというこの時点でボスケが最高のカタチと信じて臨んだ構えが、堅守のスイスに凌ぎ切られ鋭いカウンターによって先制点を奪われてしまいます。追う立場となったボスケは、ブスケツとビジャを下げてトーレスとナバスを投入する事で1トップのトーレスをシルバ、イニエスタ、シャビ、ナバスが囲み、それを1ボランチのシャビ・アロンソが支えるアラゴネス時代のクアトロ・フゴーネスの構えへと転換していきますが、それでもスペースを消して強固な守備ブロックを敷くスイスから得点を奪えずにいきなりの敗戦を喫してしまいます。想定通りの高いポゼッションによって攻守に優位なゲーム展開を作りながらも、最も必要であった勝利という結果を出せなかったのです。
ここでボスケはもう一度深い悩みの中に落ちていったと想います。廻りを見渡せば、フランスがウルグアイの堅守を攻め切れず、カメルーンが日本の堅守速攻に敗れ、イタリアもパラグアイの堅守に勝ち切れず、あのブラジルですら北朝鮮の守備ブロックを攻めあぐねている。得点はといえば、ほとんどがカウンターやDF裏を狙ったプレー、そしてセットプレーといった得点に直結する攻撃ばかりで、力の差が歴然とするようなキレイに崩したゴールなどほとんど見当たらない状態でした。
ここでボスケは速いカウンターやセットプレーといった得点により直結する構えとして、GL2戦目のホンジュラス戦から再びビジャとトーレスの同時起用に走ります。2トップというよりもトーレスがトップでビジャが左サイドでプレーするカタチでしたが、コンディションの悪いイニエスタを使わずに、右サイドのナバスとトップ下のビジャという崩しを担うタレントの薄い構えでの闘いでした。結果は今までと変わらぬ高いポゼッション状態の中でビジャが超人的な決定力を発揮しての2−0の勝利でしたが、ビジャの能力以外の部分で得点できなかった事、そしてトーレスの優れないコンディション状態に不安の残るゲームでした。
とにかく決勝トーナメントにまで進まなければならないボスケはGL最終戦のチリ戦でもビジャとトーレスの併用に懸けてきます。そしてコンディションの回復したイニエスタとシャビのコンビを起用して中盤の支配も企てます。ただし、中盤を制圧したのは中盤に人数を掛けてきたチリでした。このゲームでボスケが知ったのは、ここから先の高いレベルの闘いにおいては、例えシャビとイニエスタの黄金コンビであっても組立のサポート人数が薄い状態では中盤を支配できないという事でした。ただし、このゲームの先制点のように速いカウンターが得点を呼び込んでくれる武器となる事、そしてどんなカタチでも先に点を奪ってしまえば現在の2ボランチで構える堅固な守りを誇るスペインが相手に追いつかれるという事はほとんど無いという事も確認できたのだと想います。ただし、トーレスのコンディションは依然として悪く、このレベルの闘いに似つかわしくないものでした。
決勝トーナメント1回戦で強敵ポルトガルと戦う事になったスペインですが、ボスケはチリ戦と同じスタメンで向かい合います。チームもチリ戦で失った中盤の制圧や崩しのパターンの回復のために、シャビ・アロンソが出来る限り押し上げ、セルヒオ・ラモスも果敢に攻め上がり、ビジャが左サイドからチャンスメイクの動きを高めていきました。結果として高いポゼッションは維持できたものの、カウンター狙いのポルトガルと互角の噛み合わせとなり、相変わらずコンディションの整わないトーレスは0−0の後半序盤にジョレンテと交代する事になります。システムをビジャの1トップに変えるのではなく、ビジャを左サイドに残したままの同じカタチでの1トップの交換になっていましたので、このあたりから本調子の戻らないトーレスに対するボスケの信頼はかなり揺らいでいたと想います。そしてまたしても決勝点を叩きだしたビジャ個人の決定力の凄さとそれを演出したシャビとイニエスタが絡む王道パターンの確かさを感じ取ったのだと想います。
そして準々決勝のパラグアイ戦ですが、ここでもボスケは2戦続けたスタメンで臨みました。ただし、前半は予想通りにパラグアイの堅守を切り崩す事ができずに、ビジャの神通力も不発のままでした。ここでボスケは後半序盤からトーレスに代えてセスクを投入する事で、センターラインが強いながらもW杯初戦のスイス戦に近い構えに戻していきます。そして勝負を決め切れない後半途中からシャビ・アロンソに代えてペドロの投入で、ブスケツが1ボランチで構えるクアトロ・フゴーネスの構えへと転換していきます。これによって、シャビが低い位置から多様性に富んだ組立を見せ、ただボールを持つだけのポゼッションではなく、相手を切り崩すための攻撃的なポゼッションを手に入れたスペインが今度はチームで崩していった結果として最終的にビジャがフィニッシャーを担うという理想的なゴールによってポジティブな勝利を手にしました。この勝利によってまだ迷いの中にいるボスケの中に何かが宿ったのではないかと感じます。
そして準決勝のドイツ戦なのですが、相手は今大会のベストチームの1つであり、間違いなく迷いを抱えた状態で勝ち切れるような甘い相手ではありません。ここでボスケは、もう一度スイス戦の時のビジャを1トップとしたスタメンに戻します。シルバの代わりにペドロが名を連ねましたが、Wボランチに支えられた1トップ3MFが織りなす盤石のポゼッションによる堅守をベースに75分のゲームを支配していき、その間に先制点を奪えなかった場合は残り15分をクアトロ・フゴーネスの構えに転じて勝利を奪いにいくといったゲームプランであったと想います。結果的に73分にプジョルの魂のこもった一撃による得点が生まれたので、逃げ切りのゲームプランへと修正されていきましたが、ボスケは監督就任後で最も強い相手を迎えたこのゲームにおいてやっとこのチームのベストバランスを探り当てる事ができたのだと想います。
ドイツ戦において監督就任後のベストゲームを見せてくれた名将デル・ボスケは、決勝のオランダ戦でも同じチーム構造と同じゲームプランで臨む筈です。長い間の紆余曲折を経て、この土壇場で求め続けた真理にやっと辿りつくことのできたデル・ボスケは一時代を築いたスペインの華麗で美しいサッカーにトーナメントチームとして勝ち残るための手堅い盤石さを植え付けていきました。そして、このスペインチームとその選手たちがボスケの求めるリスク管理のサッカーに押し潰されずに次のレベルへと見事に昇華していく事ができたのは、クレメンテやカマーチョの時代の攻撃サッカーやサエス時代のリスク管理への転換やアラゴネス時代の完成されたポゼッションサッカーといった近年のスペインナショナルチームの果敢な挑戦の繰り返しによる経験値の集大成と、バルセロナを中心としたスペインクラブチームの充実によるスペイン人選手たちの質の高いレベルアップによって、現チームの選手たち1人1人が勝つために本当に必要なモノを知り得てきたからなのだと想います。
今大会でスペインは華麗な美しさと強さを誇る“勝ち切る強さ”をなるべく失わないように残しながら、ビッグトーナメントで勝ち残るために最も必要な要素である“負けない手堅さ”を手に入れる事に成功しました。その成果として、スペインは今大会で最高のトーナメントチームへの変貌を見事に遂げながら、初のW杯戴冠という悲願を成し遂げようとしているのです。
さてオランダについても少しだけ触れておきます。
V.マルワイクの前任のV.バステンが率いたオランダは充分に強いチームでした。ただし、その性質は“勝ち切る強さ”に秀でていながらも、“負けない手堅さ”を備えていないチームでした。2006年W杯ドイツ大会や2008年ユーロにおいても、その勝ち切る強さは充分に発揮されましたが、同時にトーナメントにおいては周囲の期待を裏切るようにあっさりと破れ去っていきました。
そんな中で、V.マルワイクが2年を掛けてチームに植え付けてきたのは“負けない手堅さ”であったと想います。具体的には攻撃を担う個に優れ、守備を担う個が凡庸であったオランダの選手構成の中で、Wボランチと4人の最終ラインから成る6人の守備ブロックでしっかりと守り、残りの4人のアタッカーたちの才能によって得点を奪っていくというチーム構成に着手していきました。つまり、6人で担う守備は個ではなくシステムで解決していき、4人で担う攻撃はシステムではなく個で解決していくという自国の長所を合理的に取り入れたチーム設計でした。
それをオランダの国民性が支持したのかどうかは僕には判りませんが、幸いにも4人の類稀なる才能を持ったアタッカーたちは得点を重ねていき、6人から成る守備ブロックは凌ぎ切る経験を積み重ねていきました。幸いにもこのチームが経験を積んでいったのはW杯欧州予選を中心とした日々でしたので、チーム作りの初期段階で強豪チームとぶつかって挫折を味わう事もありませんでした。W杯南アフリカ大会だけを目標に据えた谷間の時期に監督に就任して相対的弱者との対戦の多い中で少しずつチーム機能を固めていく事ができたのが、V.マルワイクにとっては色々な意味で幸運であったように想います。幸いにもチームはその強さを結果で示していましたので、V.マルワイクの目指すサッカーを消極的だと非難する声はそれ程多くはあがりませんでした。
そしてチームは時間を重ねるごとにその調整機能において大きな成長を見せていきます。攻撃においては4人のアタッカーをメインとする考え方は全く変わりませんでしたが、彼らだけで崩しきれない場合にはWボランチの1人であるV.ボメルが押し上げたり、左右のSBであるジオやV.デルヴィールが機を見て押し上げる事で、4+αの局面を作りながら攻撃における調整の巧みさを磨きあげていきました。また4人のレギュラーアタッカーと遜色の無い控えのアタッカーを備えていく配慮も怠りませんでした。そして守備においては、前線の選手でありながらも大きく守備に貢献できるカイトの起用や、危ないシーンではスナイデルやカイトやロッベンがしっかりと後方まで戻ってきて守備をするという意識の醸成、さらにはスコア的に優位な状況や押し込まれた状況において選手全員が少し引き気味の構えからカウンターを狙っていくオプション戦術の浸透を摺り込んでいきました。それらの調整機能の鍛錬によってオランダの守備は6+αの局面を作っていく手堅さも身に付けていきました。
この地道な成長によってオランダはこのW杯に出場する時点で、既にもっとも優秀なトーナメントチームの1つに成り得ていたと想います。つまりスペインが模索を続けながらこのW杯期間中に真のトーナメントチームへの変化を遂げたのに対して、オランダはもともとトーナメントチームとしてのチーム改革とチーム修正をV.マルワイクのもとで積み重ねてきましたので、その成果をこのW杯で確実に発揮していくだけであったと想います。つまりトーナメントチームとしての変化や成長という質の転換や成長が必要であった訳ではなく、もともと目指してきたサッカーでしっかりと勝利を挙げていく成功体験を1戦1戦積み重ねていく事こそが必要な最後のピースであり、その経験値を積み重ねる事でより老獪なチームになっていったのだと想います。
そして、V.マルワイクにはその風貌や発言からは想像がつかないぐらいに、現実を謙虚に見据える能力があるように感じます。オランダはまだドイツとスペインのどちらが決勝に勝ち進んでくるかが判らない状態でウルグアイ戦に臨みましたが、ドイツとスペインのどちらが勝ち上がってきたにしても現在のオランダの実力ではなかなか太刀打ちできないだろうという冷静な判断もしていたのではないかと想います。そして決勝の舞台で彼らに勝つためには+αの何かがオランダには必要になってくると考えていたように想います。僕がそう感じるのは、準決勝のウルグアイ戦の後半にV.マルワイクのリスクを負った勇気ある決断を見たからです。彼は1−1の同点でまだ45分残されている状況下で、デゼーウを代えてV.デルファールトを投入するといった新たなシステムを投入してきました。
これが意味するのは攻撃5人+守備5人へのシステム転換であり、なかなかリスク管理だけに縛られてしまった指揮官では実践することのできない勝負の一手でした。この英断によりオランダは本来の攻撃性を取り戻していき、ウルグアイに勝ち切る事ができたのですが、そこにはこの一手がウルグアイを打ち破るだけの威力を持たないのであれば、とてもじゃないがその先に待つ大一番に勝利する事は難しいだろうという判断を持ってこの奥の手を投入していったように想えるのです。僕はこのあたりに決してエリート出身ではなく、裏街道から自らの手腕と判断力だけを頼りに這い上がってきたV.マルワイクという人物の勝負師としての凄味を感じたりします。
ただし、僕個人の見解としてはスペイン相手に長時間を戦う構えとしての完成度はまだこの5+5システムには宿っていないと想います。それでも、もしゲーム展開上でビハインドになる状況を迎えた場合にはこの5+5システムをV.マルワイクは躊躇なく奥の手として投入してくるように想像しております。
こうして比較してみるとよく判るのですが、スペインとオランダは共に今大会でもっとも優れたトーナメントチームであったと想います。勿論、決勝まで勝ち残ったチームなのだからトーナメントチームとしての資質は持っているのですが、それにしてもお互いがW杯で優勝するために必要と考えてきた要素が同じ方向性であったと想うのです。お互いがこのW杯で優勝するために必要だと考えてきたのは、“勝ち切る強さ”ではなくて“負けない手堅さ”であり、その方向に舵を切っていった両監督の優れた戦術眼とそれに充分に応えてきた選手たちの能力の高さを考えると、この両チームが決勝を戦うのは必然のようにも感じられるのです。
勿論、他にも優勝候補と言われる強豪国でありながらこの方向に舵を切ってきたチームもありました。ブラジルは同じ方向に舵を切りながらも経験における拙さを露わにしてオランダに破れ去りましたが、まさに戦いの歩みさえ違っていればこの最終舞台に立つだけの地力と能力を持ち合わせたトーナメントチームだったと想います。そして能動と受動の両方の構えを研ぎ澄ます事であらゆる状況で勝ち残れる地力を養ってきたドイツも僅かにスペインには及びませんでしたが、この最終舞台に立っていてもおかしくない実力を持つトーナメントチームであったと想います。そういう意味では、今大会はW杯というビッグトーナメントを勝ち切るために優勝候補と言われるチームを率いる立場の監督たちがどういう方向性に行き着くのかがはっきりと感じとれた大会であったように想います。
そして、お互いに“負けない手堅さ”を磨いてきた事でこの決勝の舞台にまで辿り着いたスペインとオランダの両チームは、共に奥の手として“勝ち切る強さ”も密かに用意しております。スペインはクアトロ・フゴーネスであり、オランダは5+5システムです。お互いに勝負の時間帯やビハインドの時間帯が訪れた時には、ここまで我慢してきた封印を躊躇なく解き放ってこの勝負の一手に懸けてくる今までとは違う姿も見せてくれるでしょう。そして、間違いなくそこにはこの決勝戦だからこそ実現するスペクタクルなシーンが見られる筈です。
勝負はやってみないと判りませんが、僕はスペインの優勝を夢見てみようと想います。美しく眩いばかりの華麗な強さで一時代を築いてきたスペインサッカーの美しすぎる結実を、苦しみ抜いてここまで辿り着いた名将デル・ボスケとともに夢見てみたいと想います。
さぁ、どんな感動的な終幕が訪れるのか、最大限の期待を込めて見守りたいと想います。
あなたも自分だけの想いを込めて、この決勝戦を見守ってください。
同居人 Pu-er

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